『マネタリーベース』の概要
マネタリーベースの意味や発表時期を紹介していきます。
公表日程 | 毎月(翌月第2営業日発表) |
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リンク先 | マネタリーベース |
マネタリーベースとは?
マネタリーベースは「日本銀行が供給する通貨」のことで、市中に出回っているお金である流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と「日銀当座預金」の合計値となる。
なお、1981年3月以前のマネタリーベースの定義とは異なる。
※(1981/3月以前)マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「準備預金額」
マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」
マネタリーベースを見てみよう
マネタリーベースは日銀が発行する資金量であることがわかった。それでは、実際にマネタリーベースをどのように見ればいいか、統計データとともに見ていこう。
マネタリーベースはどう見ればいい?
マネタリーベースを増やすことは、日銀当座預金や金融機関にお金が増えることなので、金融機関はより金利の高い融資としてお金を活用でき、経済が活性化される。景気が過熱しているときには、マネタリーベースを減らしインフレを抑制する。
お金の量が増えれば、金利が下がるため、借り入れを増やし投資に回そうとするが、お金の量を減らせば、金利が上がり、投資は控えられる。
このことからマネタリーベースが増加傾向にある時期は景気を刺激させようとし、減少傾向にある時期は景気を抑制させようとしていることが分かる。
マネタリーベースをグラフで確認しよう
マネタリーベース
2013年4月4日に「量的・質的金融緩和」を導入し、金融調整目標を無担保コール翌日物金利からマネタリーベースに変更した。当時の日銀副総裁岩田規久男氏は著者「日銀日記」で、政策委員会金融政策決定会合で予想外にほぼ全員一致で賛成したとある。2013年からマネタリーベースが急激に増えているのは、この政策決定会合による影響である。
この時からインフレターゲット2%という目標を設定するが、物価上昇は円の価値が下落することであるため、為替相場での円安を目指していることにもなる。
岩田規久男氏はいわゆるリフレ派で、異次元の金融緩和で投資を活発化させ、景気を刺激し、デフレ脱却を目指した。しかし、2019年8月現在、インフレターゲット2%は達成できておらず、資金があっても個人・企業ともに貯めこんでいるのが現状である。
マネタリーベースの対名目GDP比
GDP規模が異なる他国のマネタリーベースと比較する場合には、「マネタリーベースの対名目GDP比」が利用される。日本のネタリーベースの対名目GDP比が90%近くであるのに対し、米国の水準は20%、ユーロ19ヵ国が28%となっている。
(参考)
・異次元緩和の問題点
マネタリーベースとマネーストックの違い
マネタリーベース統計は中央銀行が供給する通貨で、日銀当座預金や金融部門の保有現金(銀行券と貨幣)が含まれるが、マネーストック統計は金融部門全体から経済に対して供給される貨幣のことで、日銀当座預金や金融部門の保有現金(銀行券と貨幣)は含まれない。日銀当座預金や金融部門の保有現金(銀行券と貨幣)は金融部門が保有しており、経済に供給されていないためである。
関連用語
・テーパリングTapering:量的緩和の縮小
・イールドカーブ・コントロール:長短金利操作のことで、2016年9月の日銀院有政策決定会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」として導入された。短期金利のマイナス金利政策と10年物国債金利がほぼゼロ%になるような買い入れで、短期から長期までの金利をコントロール。
・オーバーシュート型コミットメント:インフレターゲットである2%を超えたとしても安定的に超えるまでは金融緩和を行うことをコミットメント(約束)したもの
(参考)
・マネタリーベース
・ゼロからわかる『金融政策:日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」』
・量的質的緩和でインフレにならない訳
・財政状況と長期金利
・最近の金融経済情勢と金融政策運営
・平成30年度 年次経済財政報告